キリスト教の教派を超え、またクリスチャン・ノンクリスチャンを問わず、ともに賛美を捧げ喜びを分かち合う「教会音楽祭」は、日本最大規模のエキュメニカル・イベントです。

さまざまな教派から集まったメンバーによる実行委員会によって企画/運営されています。教会音楽祭実行委員会規約はこちら

教会音楽祭のあゆみ


カトリック東京カテドラル聖マリア大聖堂にて
教会音楽祭は、ルーテル教会の長谷川健三郎、カトリック教会の佐久間彪、聖公会の宅間信基の三師の間で、教派を超え、音楽をもって一緒に主を賛美する集いをしてはどうか、と話し合われたことに端を発する。それは1967 年秋のことであった。三師は、それぞれの属する教派に呼びかけると同時に日本基督教団にも声をかけ、委員を出し合い、準備を進めた。日本基督教団からは、賀川純基氏が東京教区を代表して参加した。

 1. 各教会が自分達の音楽を発表し合う
 2. 各教会間の交わりと一致の業を実践する
 3. 日本の教会音楽のあり方を模索する


この三つを柱とする目標を掲げ、内容とプログラムを用意し、第一回教会音楽祭が開かれた。1968 年 6 月 10日(三位一体主日)の午後、千数百余の会衆は、各教派合計 250 名からなる聖歌隊と共に声を合わせ、「力の主をほめたたえよ」と一人の主を賛美したとき、その壮大な響きは東京カテドラル聖マリア大聖堂にこだまして、心を一つにされた一同は大きな感激を味わった。
それは第二ヴァチカン公会議後カトリック教会で典礼の改革が進み、新しい日本語の典礼聖歌が次々と生まれ、日本基督教団もその前年、『讃美歌第二編』を出版したという時期であった。

最初は音楽を紹介し合うだけであった教会音楽祭は、以後毎年主題を定め、共に祈ることに大きな意義を感じ、次第に礼拝の形に整えられていった。各教派持ち回りで幹事を担い、毎回捧げられる献金を用いながら、エキュメニカルな集会としては日本最大規模の集会へと成長していく。

各教派の聖歌隊は日本の古典楽器の伴奏、ロックやポップス風の合唱、シュプレッヒコールのような詩編群続、リタージカルダンス、パフォーマンスを伴う合唱…といった具合に毎回さまざまな新しい試みを伴って音楽祭に参加するようになっていった。そればかりでなく、教派を超えて共同の祈り、賛美を生み出すことも始まる。教会音楽祭委員会訳の口語の主の祈りは、後に NCC 訳の主の祈りの参考にされ、高田三郎氏が合唱曲「聖フランシスコの平和の祈り」を教会音楽祭のために作曲、「ガリラヤの風かおる丘で」、「救いの道を」など、作曲はカトリック、作詞はプロテスタントのエキュメニカルな賛美歌の数々が生まれ、発表されていく母体となっていった。こうした出会いとネットワークから『ともにうたおう−新しいさんびか 50 曲』(日本基督教団出版局 1976 年)といった賛美歌集が誕生し、各教派がその後次々と出版していく賛美歌集も自分の教会内にとどまらないエキュメニカルな賛美歌の交流がなされていくようになった。

 これまでの歩みの中では、草創期を担った4教派の他に、ハリストス正教会、改革派教会、日本キリスト教会、カンバーランド長老教会、日本バプテスト連盟、福音派諸教会、在日大韓基督教会、東京台湾教会、テゼ共同体、日本長老教会、日本同盟基督教団…といった参加の広がりを見せている。

 開催会場もカトリックの東京カテドラル聖マリア大聖堂、麹町聖イグナチオ教会主聖堂、聖公会の聖パウロ教会(祐天寺)、神田基督教会(末広町)などが用いられてきた。また、この音楽祭の意義を深く捉え直そうと、1992 年にはシンポジウム「新しい教会音楽の可能性をめざして」、94 年には高田三郎氏による講演会「典礼聖歌を作曲して」も開催されている。

 こうした草の根からの活動の積み重ねが評価され、2004年 4月 29日、第26回教会音楽祭実行委員会は、日本エキュメニカル協会(徳善義和理事長)からエキュメニカル功労者として顕彰された。

 2008年には「40周年の集い」として、記念礼拝とフォーラムが開催され、「過去×現在×これから」をテーマに、教会音楽祭で生まれた曲を歌いながら、初心に立ち返りつつ、新しい歩みが始まっていることを確認した。第 28 回のために公募を行ったのを初めに、会衆賛美を生み出すことに努めてきた。第 31 回では「ともに希望の歌を」のテーマのもと全国諸教会に詞曲の公募がなされ、1 曲を選考した。

 教会音楽祭実行委員会はルーテル教会、カトリック教会、聖公会、日本キリスト教団が持ち回りで幹事を担ってきたが、2013年に合同執行部として日本バプテスト連盟、日本同盟基督教団、カンバーランド長老キリスト教会からの委員が実行委員会の取りまとめ役をつとめた。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会をはじめて会場として使用させていただいたことを機に、同教派の参加が加わったことも喜びであった。第32回も引き続き幹事は合同執行部(委員構成:ルーテル教会、聖公会、ウェスレアン・ホーリネス教団)の形で担った。日本の諸教会が教派を超えて合同賛美グループを編成すると共に、韓国(カトリック東京韓人教会)、中国(在日華人クリスチャンセンター)、英語会衆(Community Arts Tokyo Singers)が、四か国語によってともに主を賛美し、主の平和を祈る時となった。

 第33回(2015年)は「心ひとつに ─争いから交わりへ」をテーマに、初めて玉川聖学院谷口ホールを会場にお借りして開催した。ひきつづき「教派を超えた合同の賛美」を目指し、幹事はカトリック、カンバーランド長老キリスト教会が合同で担った。大きな特色となったのが、初めて結成されたエキュメニカル・オープン・クワイアである。所属教会・教派、クリスチャンであるかないかを問わず参加を呼びかけ、2回の練習を経て会場でともに声を合わせる幸いを得た。公募当選作として「心ひとつに」の歌詞に、2つの旋律をセットし、会場の参加者全員で賛美したことも喜びであった。

 第34回(2019年)は日本基督教団が単独で幹事を担い、青山学院宗教センターの後援を得て同学院ガウチャー記念礼拝堂で開催した。「旅」をテーマに、各教派が持ち寄ったさまざまな曲のほか、エキュメニカル・オープン・クワイアでの全員の合唱、青山学院の大学生、小学生も参加し、多彩な賛美を分かち合う時となった。

 新型コロナウィルスによる感染症の流行によって教会の礼拝をはじめ、ことに合唱にかかわる活動が自粛されるなか、第35回は当初の予定から1年延期し、2022年に動画配信によるオンライン形式で開催した。教派を超えて集まった有志が「事務局」として取りまとめ役を担い、幅広い時代・形式の賛美、祈りやメッセージを録画して50分ほどの動画作品を製作。視聴回数は、1年間の公開期間で4000回を超えた。